キューバ:食事をしない国
おなかがすいてきた。時間は13時だ。
ご飯を追い求め街を歩く。どこにもお食事処がない。キューバの人はお酒を飲むばかりでほとんど食事をしないらしい。街にはバーとカフェしかない。
餓死の恐怖を感じながら路地の一角に小さなお店を見つけた。
恐る恐る突入してみると4人掛けテーブルが3つあるくらいの小さなレストラン。客は一人もいない。高まる恐怖に立ち向かいながら、店員さんに声をかける。英語が全く通じない。さすがアメリカと国交を断絶していただけのことはある。
メニューもないので全く食事にありつけそうにない。困った店員さんが奥の別の店員さんを呼んだ。英語の話せる人がいるんだとわずかな希望をいただいたが、それ以上の衝撃が待っていたのであった。
キッチンで髪をあらっていた。びしょ濡れの長髪をタオルで拭きながらその女性が話しかけてきた。恐怖だった。そして英語は通じなかった。
スペイン語でぺちゃくちゃ話してきたので、”OK”といったら納得してくれた。何かを注文できたようだ。”ドス・セルベッサ”も忘れずに伝えた。相方はスペイン語をほぼ勉強しなかったが、”セルベッサ”だけはおぼえていた。ビール2つ、注文した。
やっと出てきた飯。茶色いご飯にもやしと草が入ったチャーハンのような飯。髪を洗ったキッチンで作った飯。キューバでの最初の飯。恐怖の飯。
だが空腹に勝つものはないようであっさり完食してしまった。案外うまい。そして150円。安い。
これから1週間、毎日これを食べるのかと思うと気が遠くなったが、150円なら十分すぎる食事だった。
連続で襲い掛かる衝撃につかれた我々は、いったん宿に戻ってお昼寝をしよるにそなえることにした。
お店を出るころには、あの店員の髪の毛も少し乾き始めていた。