キューバ:キューバとはどこにあるのか。
自分がキューバにいるという現実が信じられない、理解できない。
おそらくあれはキューバではなかったのかもしれない。
だって前情報ではキューバでは入国審査に1時間、荷物受け取りに1時間、両替に1時間かかると聞いていた。社会主義ではかくも人間が堕落するのかなんて思っていた。
ところが、実際はスムーズとまで言えないがいわゆるラテン国のノリだった。入国審査は確かにきれいなCAのお姉ちゃんに見とれていたらガンガン追い抜かれ、数十分を要したが、スーツケースはすぐ出てくる、両替もさほど時間がかからなかった。
おそらくこれはキューバではない。あるいは、先駆者たちがキューバを自らのものとすべく吹き込んだ嘘が流布しているか、のどちらかだ。
(両替に並ぶ様子)
Japaneseが頑丈なスーツケースと潤沢な資金を携え、海外旅行最初で最大の難関、タクシーに立ち向かうのであった。
なぜ怖い思いをしてタクシーに乗らねばならないのかさっぱり理解できないが、海外のタクシーはこわい。ネットで調べた安くタクシーに乗る方法をいくつか試すもあえなく挫折し、できる限り気弱そうな運転手をさがして観光客価格で乗り込む。
いくら気弱な運転手だとはいえ、何があるかわからない。常にスマホのマップで現在地を追いながら旧市街へ向かうのであった。オフラインでも現在地がわかるなんて恐ろしい限りである。
オフラインマップと車窓を交互に眺める。絵にかいたような原色のクラシックカーがものすごい物音を立てて走っている。まるで中国人観光客のダウンジャケットの色と同じような色使いだ。中華大原色集団はアメ車であり、アメ車は中華大原色集団なのである。絵具はあまり混ぜないで使うタイプなのかもしれない。
キューバというカリブ海の島国で中華人民共和国に思いを馳せているうちに、タクシーは停車した。キューバの旧市街の1角、今夜泊まる予定の宿である。時間は昼の11時。想像を絶するほどの砂煙が立ち込めていた。