死んだ亀

デッドタートル

佐渡島:ノスタルジック野球部スメル

予報通り風が段々強くなってきたので、予約していたジェットフォイルちゃんをキャンセルし、一本前の大型カーフェリーに乗ることにした。

誰もが同じことを考えていたのだろう、ものすごい人だ。こんなに多くの人がこの島にいたとは考えられない。皆マラソンをしていてちらばっていたのだろうか。

席は勿論埋まっており、フリースペース的な所もほぼ埋まっている。地べたに新聞紙を敷いて座る人もいるくらいだ。ほぼスラム。

ストリートチルドレンを脇目に場所を探していたら、テレビもあり狭い部屋のようになっている謎スペースがあった。

しかも半分ほどスペースが空いている。ラッキー!安泰を手に入れた。

そこに足を踏み入れた瞬間、ハッとする。

臭い。野球部だ。

9月も半ば、しかも台風でそこそこ寒いというのにそれを思わせない夏の部室のかほり。

0.3秒ほどノスタルジックに浸ってしまったものの、やはり臭い。

しかし一歩外はスラム。

夏のノスタルジーに魂を売るしかなさそうだ。

高校の頃、席が近かった野球少年を思い出す。

日焼けた肌、白い歯、思春期ニキビで少し赤らんだ顔が何とも言えずキュートな野球少年だ。

そいつもまた、めちゃめちゃいい奴だったが、めちゃめちゃ汗臭かった。

ある日の授業中、小声で名前を呼ばれたので振り向くと、したり顔で片乳首を露出しており、思わずふきだしてしまう事件が起きた。先生には私がおこられた。

後で聞けばバツゲームだったようだが、それ以来彼とはマブダチだ。

そういえばその時代一番仲が良かった女友達はワキガだった。

ついでに、彼女の携帯のブックマークには近親相姦もののネット官能小説が入っていたことを、私は知っている。

高校卒業してからは一度も会っていない。

雑魚寝状態のそのスペース内で、なるべく匂いを嗅がないように相方のパーカーに顔を沈めながら、そんなノスタルジックに浸っていた。

パーカーから顔を上げると目の前には別のオヤジ客の足が目の前にあった。

臭かった。

 

ジェットフォイルちゃんなら1時間強でつくところ、2時間以上かけて両津港へ到着した。

ついた頃はもう夜19時頃で、直前に取ったそこそこ快適そうなビジネスホテルにチェックインしてから新潟駅周辺の飲み屋を探しに出る。

「今夜は8件行こう」などと言いながら、3件目で私は爆睡。

そのまま泥のようにホテルに戻り泥のように眠る。

なのであまり記憶にないのだが、新潟はやはり酒も食べ物も美味しかった。気がする。

 

帰りは朝一番の新幹線。

心は山居の池ほどに穏やかだった。

このままここにいたら穏やかに死んでいく気しかしない島、佐渡最高だった、