死んだ亀

デッドタートル

佐渡島:まんきん少年

アジトランス状態の私達は寿司屋を後にし、 頑張れば一日で島一周できるとのことで、頑張ってみることにした。 島のてっぺん(北部)まで行き、宿がある宿根木(南部)を目指すというルート。 私たちはBOOK OFFで集めたアツいミュージックを聴きながら何もない海沿いの道をドライブした。 そんな中でも一番ムネがアツくなったミュージックはスキマスイッチの「全力少年」だ。

 

相方はたまに、言葉づかいが結構きもくなるのだが、当時は「まんきん」という言葉がブームだった。 一部のクセの強い関西人が使う方言らしく、「本気で」「全力で」に値する。

例)まんきんでナンパする

言葉のインパクトがものすごいので、この言葉を知らない人の前で発すると必ず不穏な顔をされる。 佐渡島旅行の後は暫く「まんきん病」(すぐまんきんって言っちゃう)にかかっていたので、とても困った。会社でも上司に対して「まんきんで頑張ります!」とか言いそうになる。 スキマスイッチのあの名曲も、まんきん病のせいで台無しだ。一気に下品な感じになる。

 

千切れそうなテンションでまんきん少年を歌う私達とは裏腹に、天気は不穏になってきた頃。 「山居の池」にたどり着いた。

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死ぬかと思った。いや既に死んでいるのか?と思うくらい、 そのくらい穏やかな池。動かない池。動いているようで実は動いていないかもしれない水面を見つめていると狂いそうになる。木が生い茂りすぎだし、葉は緑すぎる、水は透き通りすぎだし、なぜか小声になるし。 東京で「音が消える」瞬間なんてあるわけなくて、心のどこかではそれを求めて田舎に旅をしているはずなのに。これ以上滞在したら本当に死んでしまいそうだったので逃げるようにして車に戻った。

 

なんなんだ、あの幻想のような体験は。

 

穏やかすぎる場所でざわついた心をまんきん少年で落ち着かせ、ドライブを続ける。